第8章脳・神経Neurosurgery
23 虚血性脳卒中患者における抗血栓薬退院時処方率 Discharged on antithrombotic therapy
虚血性脳卒中患者における抗血栓薬退院時処方率
当院値の定義・計算方法
- 分子
- 退院時に抗血栓薬が処方されている患者数
- 分母
- 18歳以上の虚血性脳卒中患者数
- 分母除外
- 死亡退院患者、在院日数が120日以上の患者、一過性脳虚血発作患者; TIA
参考値1)の定義2)
- 分子
- Ischemic stroke patients prescribed antithrombotic therapy at hospital discharge
- 分母
- Ischemic stroke patients
臨床的意義: なぜこの指標が医療の質を示しているのか
虚血性脳卒中では、急性期から慢性期にかけて抗血栓薬の投与が、脳卒中学会ガイドラインでは推奨されています。脳梗塞のタイプにより抗血栓薬は異なり、動脈硬化によるアテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞は抗血小板薬、非弁膜症性心原性脳塞栓症は抗凝固薬となります。ただし、透析患者さんや出血傾向がある場合は禁忌とる場合があり、基本的に虚血性脳卒中患者では抗血栓薬は必要ですが、100%になることはありません。また当初虚血性脳卒中と診断されるも、その後てんかんや薬物中毒など他の疾患の場合もあります。このため、100%に近い値を維持していることが、適格な治療が行われている指標になります。
Plan(計画)
- 指標の設定と二次利用データを用いた測定
Do(実行)
- 頭部MRI再検査による、梗塞の拡大、出血合併症を含めた、投与禁忌事項(投与不可事項)の確認脳卒中専門医による治療法の再評価。
Check(評価)
- 二次利用データを用いて退院時処方率の確認
Act(改善)
- モニタリングの継続と実際の処方されなかった因子の検討
執筆者
- 医療の質
評価側面 - Structure Process Outcome
- 指標改善
パターン - 医療従事者へのリマインド コミュニケーションの改善 監査とフィードバック 医療者への教育 患者への教育 患者へのリマインド 患者へのプロモーション 組織・体制の変更 ルールの変更
24 心房細動・心房粗動を伴う虚血性脳卒中患者における抗凝固薬退院時処方率 Anticoagulation therapy for atrial fibrillation/flutter
心房細動・心房粗動を伴う虚血性脳卒中患者における抗凝固薬退院時処方率
当院値の定義・計算方法
- 分子
- 退院時に抗凝固薬が処方されている患者数
- 分母
- 18歳以上の心房細動・心房粗動を伴う虚血性脳卒中患者数
- 分母
- 死亡退院患者、在院日数が120日以上の患者、一過性脳虚血発作患者; TIA
参考値1)の定義
- 分子
- Ischemic stroke patients prescribed anticoagulation therapy at hospital discharge
- 分母
- Ischemic stroke patients with documented atrial fibrillation/flutter
臨床的意義: なぜこの指標が医療の質を示しているのか
心原性の脳塞栓症の再発予防には抗凝固薬が推奨されています1)。心原性脳塞栓症の原因は発作性心房細動が多いのですが、救急外来受診時には消失していることが多く、診断が困難です。心エコーで左心房径の拡大(40mm以上)、凝固線溶系分子マーカー(Dダイマー)の上昇など、そのほかのデータから推測して、最終的に長時間の心電図モニターで診断します2)。
心原性脳塞栓症と診断されて抗凝固薬が投与された症例数が多いほど、心臓の検査数が多いことを意味します。
入院中に心房細・粗動がみつかれば、抗凝固薬が投与されますが、広範な梗塞で出血を伴っている場合(出血性梗塞)は、出血が収まるのを待ってから開始されます。内服の抗凝固薬は、ワルファリンと直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulants: DOAC)の2種類があります。高度の腎機能障害や透析患者では、抗凝固薬が投与できないことがあります。
Plan(計画)
- 指標の設定と二次利用データを用いた測定
Do(実行)
- 頭部MRI再検査による、梗塞の拡大、出血合併症を含めた、投与禁忌事項(投与不可事項)の確認脳卒中専門医による治療法の再評価。
Check(評価)
- 二次利用データを用いて退院時処方率の確認
Act(改善)
- モニタリングの継続と実際の処方されなかった因子の検討
執筆者
- 医療の質
評価側面 - Structure Process Outcome
-
医療の質を評価する3つの側面についての説明が入ります。
医療の質を評価する3つの側面(構造・過程・結果)のどれに相当するのかを示しています。
- 指標改善
パターン - 医療従事者へのリマインド コミュニケーションの改善 監査とフィードバック 医療者への教育 患者への教育 患者へのリマインド 患者へのプロモーション 組織・体制の変更 ルールの変更
25 脳卒中患者におけるリハビリテーション実施率
脳卒中患者におけるリハビリテーション実施率
当院値の定義・計算方法
- 分子
- 入院中にリハビリを実施した患者数
- 分母
- 18歳以上の虚血性脳卒中患者数
- 分母除外
- 死亡患者、在院日数が120日を超える患者、一過性脳虚血発作患者
参考値の定義・計算方法1)2)
- 分子
- Ischemic or hemorrhagic stroke patients assessed for or who received rehabilitation services
- 分母
- Ischemic or hemorrhagic stroke patients
臨床的意義: なぜこの指標が医療の質を示しているのか
脳卒中患者では、早期にリハビリテーションを開始することで、機能予後を改善し、再発リスクの増加もみられず、ADLの退院時到達レベルを犠牲にすることなく入院期間が短縮されることがわかっています1)。 わが国の「脳卒中治療ガイドライン20212)」においても「十分なリスク管理のもとに、早期座位・立位、装具を用いた早期歩行練習、摂食・嚥下訓練、セルフケア訓練などを含んだ積極的なリハビリテーションを、発症後できるだけ早期から行うことが勧められる(推奨度A エビデンスレベル中)」と記載されています。一方で、離床開始のタイミング、訓練量および頻度については未だ明確な指針は示されておらず3)、患者の個別性と安全に配慮しながら、多職種が連携して計画を立てていくことが必要とされています。
Plan(計画)
- 虚血性脳卒中患者に対し入院早期からリハビリテーションを提供する
Do(実行)
- 脳卒中診療パスにリハビリテーションオーダーを組み入れる
- 入院3日以内に理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が機能評価を行い、リハビリ計画を立てる
Check(評価)
- 毎週行われているリハビリテーションカンファレンスにて患者個々のリハビリ計画や内容について多職種で協議をする
Act(改善)
- 定期的に達成状況や逸脱症例の要因を検討する
- 上記Plan、Do、Checkに基づき安全で個別的なリハビリ診療を提供する
考察・改善に向けての今後の予定
2022年度の達成率は94.7%であり、ほぼ全ての虚血性脳卒中患者に早期リハビリテーションが提供できたと言えます。一方、早期リハビリテーションを提供できなかった症例としては急性期転院症例や入院直後に他疾患の治療が必要となった患者などが想定され、適応のある患者に対しては遅滞なくリハビリテーションが提供されているものと推測されます。今後は、リハビリテーション開始のタイミング、安全性などについてもより一層の検討が必要と考えています。
参考文献
- 1)America’s Hospitals: Improving Quality and Safety; The Joint Commission’s Annual Report 2015.
- 2)日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会編 脳卒中治療ガイドライン2021.協和企画20213)
- 3)Bernhardt J , et al. Efficacy and safety of very early mobilization within 24h of stroke onset(AVERT):a randomized controlled tirial. Lancet 2015
執筆者
- 医療の質
評価側面 - Structure Process Outcome
- 指標改善
パターン - 医療従事者へのリマインド コミュニケーションの改善 監査とフィードバック 医療者への教育 患者への教育 患者へのリマインド 患者へのプロモーション 組織・体制の変更 ルールの変更