2患者満足Patient
Satisfaction

5 意見箱投書中に占める感謝と苦情の割合 Thank you letters,patient claims

意見箱投書中に占める感謝の割合

意見箱投書中に占める苦情の割合

当院値の定義・計算方法

分子
(感謝)感謝状件数
(苦情)苦情件数
分母
意見箱に寄せられた件数
補足
2004年度・2005年度の分母は枚数、2006年度以降の分母は内容に対する件数

臨床的意義: なぜこの指標が医療の質を示しているのか

投書されたご意見は、診療、接遇、施設設備、食事など、病院が提供しているものすべてに対する「質の評価」ともいえます。アウトカム指標であるご意見の評価と内容分析をしていくことが、患者満足度の向上や、QOL(quality of life:生活の質)の向上につながると考えられます。

Plan(計画)

  • 2005 測定開始
  • 2007 測定方法の変更

Do(実行)

  • 2017 毎第2火曜にサービス向上委員会による院内ラウンド(掲示板、駐輪場、清掃関連)
  • 2018 毎第2火曜にサービス向上委員会による院内ラウンド(掲示板、駐輪場、清掃関連)
  • 2019 毎第2火曜にサービス向上委員会による院内ラウンド(掲示板、駐輪場、清掃関連)
  • 2019 サービス向上委員会スローガン「みんなにいいこと―思いやりある態度で―」設定
  • 2019 院内掲示物適正化の計画と立案、予算申請
  • 2019 職員の身だしなみについての啓発を「明るい窓」に寄稿
  • 2019 医師の身だしなみについてポスター作成、掲示
  • 2019 一部の病室でシャワールームの汚れが目立つため、次年度での工事を企画
  • 2019 エレベーター内での職員のマナー(私語を慎む)啓蒙のため、ポスターを掲示
  • 2019 感謝のご意見が多い部署を表彰し、「明るい窓」に掲載
  • 2020 毎月第2火曜にサービス向上委員会による院内ラウンド(掲示板、駐輪場、清掃関連)実施
  • 2020 サービス向上委員会スローガン「みんなにいいこと―思いやりある態度で―」 継続
  • 2020 職員更衣室をきれいに利用するためのポスター作成
  • 2020 電子媒体上で感謝の気持ちを送る「サンキューカード」実施
  • 2020 マスクをしていても声や目の表現でより良い患者対応ができるようポスター作成、掲示
  • 2021 毎月第2火曜にサービス向上委員会による院内ラウンド(掲示板、トイレ、清掃関連)
  • 2021 接遇に関する出張研修を開催 (患者サービス課マネジャー)
  • 2021 接遇に関するe-learningを開催 (患者サービス課マネジャー)
  • 2021 院内広報誌「明るい窓」投稿 患者経験調査座談会
  • 2021 笑顔を呼びかけるカード配布
  • 2022 サービスリーダーの周知のため、サービスリーダーカードを作成、配布
  • 2022 ペイシェント・エクスペリエンス(PX)の評価の高い部署の表彰を実施
  • 2022 教職員ポータルサイトにてご意見の発信を開始

Check(評価)

  • 2017年度接遇に関するご意見 感謝19%
  • 2018年度接遇に関するご意見 感謝17%
  • 2019年度接遇に関するご意見 感謝14%
  • 2020年度接遇に関するご意見 感謝12%
  • 2021年度接遇に関するご意見 感謝19%
  • 2022年度接遇に関するご意見 感謝16%

Act(改善)

  • 2017.5,7,10,2018. 3 サービスリーダー会を定期的に開催
  • 2019. 6,7,11,2020. 3 サービスリーダー会を定期的に開催
  • 2020. 6, 9, 12, 2021. 3 サービスリーダー会を定期的に開催
  • 2021. 6, 9, 12, 2022. 2 サービスリーダー会を定期的に開催
  • 2021 他部署と連携し「接遇研修」を開催
  • 2022. 8, 11, 2022. 3 サービスリーダー会を定期的に開催

考察、改善に向けての今後の予定など

サービス向上委員会との連携によるスタッフへの情報共有と啓蒙活動で患者サービスの向上に繋ぐ

2022年度、ご意見箱に寄せられたご意見の総件数は410件であり、昨年度とほぼ同数で、2019年以前のご意見数と比較すると半数程度といえます。ご意見投書の内訳は、感謝が48.0%(昨年度比13.7%Down)、苦情33.7%(昨年度比9.9%Up)と、そして、感謝・苦情それぞれの6つのカテゴリー(診療・看護・接遇・運用管理・施設設備・食事)別の結果では、感謝の上位3項目は、①診療32.3%、②接遇29.4%、③看護25.9%で、苦情の上位3項目は、①接遇30.4%、②運用管理18.8%、③診療17.4%でした。昨年度、感謝の上位3項目に入らなかった接遇が再度上位項目に上がってきました。今年度、接遇に対して強化を図った、サービス向上委員会との活動が寄与したと考えます。来年度も接遇が高い水準で推移できるよう、サービス向上委員会との連携によるスタッフへの情報共有と啓発活動にて、患者サービスの標準化を図ることに取り組みたいと考えます。

執筆者

久保田 純子
病院事務部患者サービス課マネジャー
医療の質
評価側面
Struc­ture Pro­cess Out­come
指標改善
パターン
医療従事者へのリマインド コミュニケーションの改善 監査とフィードバック 医療者への教育 患者への教育 患者へのリマインド 患者へのプロモーション 組織・体制の変更 ルールの変更

6 患者経験調査 Patient experience – inpatient and outpatient

患者経験調査 入院患者「全体としてこの病院に満足していますか?」

当院値の定義・計算方法

分子
分母のうち「大変満足」または「満足」と回答した入院患者数
分母
入院患者への患者経験調査項目「全体としてこの病院に満足していますか?」の設問有効回答数

患者経験調査 外来患者「全体としてこの病院に満足していますか?」

当院値の定義・計算方法

分子
分母のうち「大変満足」または「満足」と回答した外来患者数
分母
外来患者への患者経験調査項目「全体としてこの病院に満足していますか?」の設問有効回答数

臨床的意義: なぜこの指標が医療の質を示しているのか

当院では、1998年度より患者満足度調査を実施しています。JCI(Joint Commission International)認証を受けたことを契機に、2013年から米国政府が開発した患者評価指標〔Hospital consumer Assessment of Healthcare Providers Systems:HCAHPS〕を参考にした質問紙を導入しました。入院患者においては死亡退院以外の退院患者を対象に通年で実施し、2017年から英語・中国語・ロシア語・スペイン語の質問紙を追加作成し、調査を継続しました。

外来においても日本語版のみの質問紙配布を2013年より四半期毎に実施し、全診療科および予防医療センター、聖路加メディローカス、訪問看護ステーションも対象としています。

2020年4月から、国際的な看護の質評価であるMagnet Recognition Program®への適合、ペーパーレス化推進により外部調査機関によるオンライン形式での調査に切り替えることとなりました。外部の調査機関を通じることで、より客観性の高い結果を得ることができ、かつ、国際比較も容易になりました。調査の蓄積、分析により、ケアの質や業務改善に活かすことができると考えています。質問内容としてはHCAHPS由来のもの(top boxでスコア化)と外部調査機関が開発したもの(meanでスコア化)の2種類で構成されています。

オンライン形式での質問の種類は、入院、外来、救急外来、訪問看護ステーション用に分かれ、それぞれ日本語と英語表記を準備し、病院施設同様、前述の付属施設も通年で調査を実施しています。

また、2021年1月1日にはJCI第7版が発効され、患者満足ではなく患者経験を測定するよう明文化されました。JCIの基準においても、患者の個人の体験を基にした主観的な評価を測定し、改善活動を実践することの重要性が明確に示されたということになります。

入院患者回答者属性

2022年度入院調査の属性情報が有効な回答のうち、年齢別回答割合は図1に示す通りで、50歳以上は54%、65歳以上は26%、性別は女性が62%、男性が38%(図2)、「当院へのご入院は今回が初めてですか?」との質問に対して「はい」が55%、「いいえ」が45%となっています(図3)。これらのスコアは2021年度結果とほぼ同様となりました。

図1 入院患者の年齢別回答割合

図2 入院患者の性別割合

図3 「当院へのご入院は今回が初めてですか?」

外来患者回答者属性

2022年度外来調査の属性情報が有効な回答のうち、年齢別回答割合は図4に示す通りで、50歳以上は59%、65歳以上は23%、性別は女性が62%、男性が38%(図5)、「当院の外来受診は今回が初めてですか?」との質問に対して「はい」が13%、「いいえ」が87%となっています(図6)。今回は昨年度よりも回答数が減っており比較が難しいところですが、回答者に女性、再診患者が多いことは昨年度と同様です。

図4 外来患者の年齢別回答割合 

図5 外来患者の性別割合 

図6 「当院の外来受診は今回が初めてですか?」

看護部目標

看護部が重要視している項目として、「礼儀正しさ」、「傾聴」、「理解できる説明」、「速やかな反応」を挙げています。入院患者調査では看護師に関するこれらの質問に対して下記のような結果になっています。(図7)

図7 入院患者の2022年度スコア

外来患者調査では、入院患者同様の質問においてスタッフがどのように対応したかを尋ねています。スコアとしては昨年より上がり9割を超える高値となりました。(図8)

図8 外来患者の2022年度スコア

Plan(計画)

  • 【外来環境】 外来待ち時間の改善・管理計画
  • 【入院環境】 病室内環境改善計画
  • 【入院環境】 疼痛管理改善計画
  • 【院内設備】 院内設備モニタリング計画
  • 【院内設備】 院内設備改善計画
  • 【院内設備】 院内掲示改善計画
  • 【接遇・マナー】 職員接遇・身だしなみの向上のための講義計画
  • 【患者経験調査】 目標値設定、分析方法、データ可視化、共有方法計画

Do(実行)

  • 【外来環境】 「一人一予約枠制度」導入
  • 【入院環境】 全室に時計設置
  • 【入院環境】 有差額室アメニティグッズ見直し、ティッシュの入院患者毎の交換
  • 【入院環境】 制限食の内容及び量の改善
  • 【入院環境】 大型車椅子購入
  • 【入院環境】 本館各フロア公衆電話の傍に椅子を設置
  • 【入院環境】 6階庭園の調査、報告
  • 【入院環境】 術後疼痛対策としてクリティカルパスウェイを変更
  • 【入院環境】 病院内での静けさ調査、および啓発ポスターの配布
  • 【入院環境】 テレビ視聴時の補助スピーカー購入
  • 【入院環境】 6階庭園整備工事開始
  • 【入院環境】 患者用レンタルパジャマサービス運用変更
  • 【入院環境】 シーツ、枕の検討開始
  • 【入院環境】 入院ファイル(各病室に配置している入院時お役立ち資料集)の内容更新
  • 【入院環境】 院内採用のオムツ、尿取りパッドを品質の良いものに変更
  • 【院内設備】 全トイレをウォシュレット対応に改修
  • 【院内設備】 全病室のトイレと浴室に手すりを設置
  • 【院内設備】 授乳室を1階に開設
  • 【院内設備】 外来採尿室トイレを改修
  • 【院内設備】 ベビーベッドの適切性評価、ベビーシート新規購入
  • 【院内設備】 外来部門ベビーベッド・ベビーシート・ベビーチェアの月極点検管理開始
  • 【院内設備】 オストメイト用トイレ設置
  • 【院内設備】 病室シャワールーム床面修復
  • 【院内設備】 外来待合椅子更新
  • 【院内設備】 病棟廊下ダウンライト設置
  • 【院内設備】 病室陰圧室整備
  • 【院内設備】 オストメイト用トイレ ピクトグラム更新
  • 【院内設備】 病棟掲示板および照明を各病棟に新設
  • 【院内設備】 小児医療センター入口ベンチ更新
  • 【院内設備】 本館1階医事課前床面更新
  • 【院内環境】 カラーユニバーサルデザインを活用した掲示物、配布用紙の検討
  • 【入院環境】 6階庭園整備工事完了
  • 【接遇・マナー】 サービスリーダー制による科・部署別サービス改善運動
  • 【接遇・マナー】 サービス、接遇に関する講演会を年に1~2回 開催
  • 【接遇・マナー】 会報誌 サービスホッとニュース発行
  • 【接遇・マナー】 サービスリーダー冊子「病院で使ってはいけない言葉集」などを発行
  • 【接遇・マナー】 「プロの原点としてのマナー」を配布
  • 【接遇・マナー】 職員に感謝の言葉を伝えよう(Thank You Card)キャンペーンの実施
  • 【接遇・マナー】 受付接遇チェックとして、受付対応基本マナー冊子作成・配布
  • 【接遇・マナー】 職員 ベストサービス賞 表彰(感謝のご意見の数により決定)
  • 【満足度調査】 2016年 試験的に短期間、外国籍(英訳調査票)患者の調査を実施
  • 【満足度調査】 2017年 日本語に加え英語・中国語・ロシア語・スペイン語の調査票配布開始
  • 【満足度調査】 2020年 質問紙配布からオンライン調査へ変更 日本語と英語版のみに
  • 【満足度調査】 自由記載コメントを印刷し部署に配布
  • 【満足度調査】 2020年 オンライン調査の支援資材としてiPad購入予算計上
  • 【満足度調査】 2021年 オンライン調査の支援資材としてiPad各部署へ配布
  • 【患者経験調査】 2021年 JCI第7版を契機として患者満足度調査から患者経験調査測定へ

Check(評価)

  • 【満足度調査】 「薬剤の説明」について診療科別、病棟別、年代別評価
  • 【満足度調査】 目標値と結果につき院内メールにて共有
  • 【満足度調査】 所定サイトにアクセスすることで瞬時に評価可能、職員と共有
  • 【患者経験調査】 診療科別、看護部門別にデータ作成、職員と共有 QI委員会にて定期的に発表

Act(改善)

  • 【入院】 2022年度 「全体として満足しているかどうか」=97.6%
  • 【外来】 2022年度 「全体として満足しているかどうか」=95.7%

考察、改善に向けての今後の予定など

患者経験調査を外部機関に委託、オンライン化継続
患者中心の医療、患者視点のサービス提供を目指す

2020年4月から開始したオンライン調査は3年を過ぎました。

当院では、患者中心の医療、患者視点のサービス提供を目指しています。それが現実のものとなっているかを測定するためにはこの調査データをモニタリング、分析する必要があります。調査結果である患者の声をヒントに改善策を構築し、更なる患者サービスを発展させていくことは、好循環となり調査を継続することの意義につながります。そして、患者からの評判が良い状況は、当院の「ファン」を増やしていくとも考えます。当院に好感を持つ「ファン」である患者は医療に参画しやすい状況となり、医療安全や感染対策に関しても職員と共に担う立場にもなっていくことが予想されます。調査を継続することで患者のニーズを常に把握、対応し、病院の具体的な未来予想図を描いていくことができると考えます。

しかしながら、調査に付随する課題はいくつかあります。

外部調査機関に依頼しているものの、集計結果等資料作成に関しては担当者による作業が必要であり、継続的な負担は免れません。資料の質や量にばらつきが出たり、適時性を損なったりすることも、やむを得ない状況になっています。

そして、国際比較が可能である点は大きな利点ではありますが、診療体制や保険制度が異なる病院との比較の是非には、疑問が残ります。

現在のベンチマークを形作る多くの病院は、アメリカ合衆国にある施設がほとんどとなっています。これを北米だけでなくアジアやオーストラリアなどへ拡大できるようにしていくことが、必要だと考えます。日本も個々に調査を実施するのではなく、制度化、統一化、恒常性のある調査を国内で実施し、共にベンチマークを形作ることが望まれます。

また、調査から得られる情報は実に膨大で、具体的な課題を抽出し続けることは、一筋縄ではいかず難しいと考えています。そのため、どのように何からアクションを起こせばよいかわからず、混沌としやすい傾向もあると言えます。

このような課題解決のために検討することは、調査の省力化や自動化の推進、調査にかかわる職員の負担軽減、改善項目の抽出を容易にするための工夫、アクションプランの策定や実行だと考えています。これらを解決するために、外部調査機関のノウハウを最大限に活用し、実践可能で効果的なプラン提供を要求していく予定です。

患者経験調査の遂行は病院の改善につながる重要項目です。課題を明確にし、患者中心の医療を目指すために積極的、かつ、今後も永続的に取り組んでいく必要があります。

執筆者

金児 玉青
副看護部長/QIセンター医療の質管理室
医療の質
評価側面
Struc­ture Pro­cess Out­come
医療の質を評価する3つの側面についての説明が入ります。
医療の質を評価する3つの側面(構造・過程・結果)のどれに相当するのかを示しています。
指標改善
パターン
医療従事者へのリマインド コミュニケーションの改善 監査とフィードバック 医療者への教育 患者への教育 患者へのリマインド 患者へのプロモーション 組織・体制の変更 ルールの変更
TOP