1病院全体QI for the
Hospital

1 病床利用率・平均在院日数 Occupancy rate, Average length of stay

病床利用率

当院値の定義・計算方法1)

分子
月間静態患者数の4月~3月の合計 静態患者とは毎日24時現在病院に在院中の患者をいい、入院した日に退院あるいは死亡した患者は含まない。
分母
(月間日数×月末病床数)の4月~3月の合計

参考値の定義・計算方法

分子
月間在院延べ患者数の1月~12月の合計
分母
(月間日数×月末病床数)の1月~12月の合計

平均在院日数

当院値の定義・計算方法1)

分子
月間延べ患者数の4月~3月の合計
分母
(4月~3月の新入院患者数+4月~3月の退院患者数)/2 新入院・退院患者とは、その対象期間中に、新たに入・退院した患者をいい、入院したその日に退院あるいは死亡した患者も含む。

参考値の定義・計算方法

分子
年間在院延べ患者数
分母
(年間新入院患者数+年間退院患者数)/2

臨床的意義: なぜこの指標が医療の質を示しているのか

保健医療機関の施設基準の1つである「一般病棟入院基本料」の枠組みにおいて、7:1や10:1という看護師配置数のほかに、平均在院日数も一般病棟における医療の質を保証する指標となっています1)

また、平均在院日数は、2003年から急性期病院において導入されている診療報酬「DPC(診療群分類包括評価)」を活用することによって、患者に効率的な医療がいかに提供され、患者の早期社会復帰を促進しているかを表す指標になります2)

さらには、病床利用率と平均在院日数は、当該医療機関における経営の質を示す指標としても活用されています。

Plan(計画)

  • 診療機能の強化を重点目標とし、目標値を設定

Do(実行)

  • 午前退院・午後入院の推進
  • 看護部の病床管理統括マネジャー・副統括マネジャーが、現場の動きをモニターしながら、病床を柔軟に配分

Check(評価)

  • 院長をはじめとして、病床管理に関連する部門・部署のメンバーが毎朝集まり、前夜から当日朝までの病院内の全病床の利用状況を把握し、病床の有効利用を促進

Act(改善)

  • 祝祭日通常診療の実施

考察、改善に向けての今後の予定など

「祝祭日の通常稼働」により病床利用率が向上。
週末の手術室活用でさらなる向上を目指す

当院の2022年度の病床利用率は70.6%で、2021年度比で2.5%減となりました。要因として、2022年度は2021年度に引き続きCOVID-19対応のために集中治療室に重症病床を確保する、一部病床を専用病床化するなど病床運営に影響があったほか、全国的なCOVID-19の流行によりスタッフの欠員が起こり、一部の機能を制限せざるを得なかったことが影響しました。

2013年度より、患者の利便性と病床利用率の向上のため、「祝祭日の通常稼働」を行っており、2022年度は6日の祝祭日の通常稼働が行われました。2022年度からは、祝祭日におけるさらなる手術室の有効活用と、平日と同水準の患者を受け入れることを目的に、これまでは平日の80%稼働としていた祝祭日開院日の手術室稼働を、平日と同様全室オープンとして、手術件数・病床利用率の向上を目指しました。その結果、祝祭日を稼働しない週と比較して、週平均で0.3ポイント病床利用率の向上がみられました。

また、2017年度からは、週末の病床利用率の向上を目的として、消化器・一般外科、整形外科、小児外科の手術を土曜日に行い(2021年度末現在:消化器・一般外科のみ)、週末の手術室を有効に活用し病床利用率の向上を目指しています。

当院の病床利用率・平均在院日数を参考値と比較すると、病床利用率は2.7ポイント上回り、平均在院日数は4.8日短い値になっています。これは、患者の入退院、転入・転出などに伴う回転率の高さを裏付けるものです。また、当院の全入院患者の約35%は予定外での入院です。急性期病院としての使命を全うするためにも、今後も回転率を高水準で維持していく必要があると考えます。

参考文献

  • 1)井部俊子, 中西睦子監修:看護管理学習テキスト第2版 看護経営・経済論. 日本看護協会出版会, 2011.
  • 2)EB NURSING編集委員・同編集部:看護データバンク-医療・看護の今とコトバがわかる.EB Nursing Vol.10 増刊1号.中山書店,2010.
医療の質
評価側面
Struc­ture Pro­cess Out­come
医療の質を評価する3つの側面についての説明が入ります。
医療の質を評価する3つの側面(構造・過程・結果)のどれに相当するのかを示しています。
指標改善
パターン
医療従事者へのリマインド コミュニケーションの改善 監査とフィードバック 医療者への教育 患者への教育 患者へのリマインド 患者へのプロモーション 組織・体制の変更 ルールの変更

2 医業利益率 Hospital management - operating margin

医業利益率

当院値の定義・計算方法

分子
医業収益-医業費用
分母
医業収益

参考値の定義・計算方法1)

分子
医業収益-医業費用
分母
医業収益

臨床的意義: なぜこの指標が医療の質を示しているのか

医業利益率は、医業収益に対する医業利益の割合を表すものです。この医業利益率が高けれ ば、医業の業績がよいことを意味します。

病院を健全に運営するうえで、収益と費用のバランスを適切な水準に保つことが肝要です。

Plan(計画)

  • 事業計画として、収入と支出の適正なバランスを維持した予算を編成(前事業年度において策定)

Do(実行)

  • 原則として予算に従い事業計画を遂行(随時)

Check(評価)

  • 実績値を把握して、予算との乖離状況およびその要因を分析(月次)
  • 年間の収支見込みに基づき適正な収支バランスが維持できているか否かを確認し、補正予算策定の要否を検討(随時)

Act(改善)

  • 予算承認外の支出案件について、実行の要否(必要性や収入増加・コスト削減の内容)を厳格に検討(随時)

考察、改善に向けての今後の予定など

新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受け、参考値を下回った

当院は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の受け入れ病院であるため、2022年度もCOVID-19の影響を大きく受けました。7~8月のCOVID-19第7波流行により、感染や濃厚接触等により就業停止となる職員が1日あたり100名以上発生し、特に病棟看護職員の欠員を受け病床制限等を実施したため病床稼働率が落ち込み、年間の病床稼働率は前年を下回りました。この結果、2022年度の医業利益率は▲8.30%となりました。

参考文献

執筆者

羽場 裕
財務部財務経理課マネジャー
医療の質
評価側面
Struc­ture Pro­cess Out­come
医療の質を評価する3つの側面についての説明が入ります。
医療の質を評価する3つの側面(構造・過程・結果)のどれに相当するのかを示しています。
指標改善
パターン
医療従事者へのリマインド コミュニケーションの改善 監査とフィードバック 医療者への教育 患者への教育 患者へのリマインド 患者へのプロモーション 組織・体制の変更 ルールの変更

3 紹介割合・逆紹介割合 Introduction rate, reverse introduction rate

紹介率

逆紹介率

当院値の定義・計算方法

紹介割合(%)
(紹介患者数+救急患者数)/ 初診患者数 × 100
逆紹介割合(‰)
逆紹介患者数 /(初診+再診患者数)× 1,000

臨床的意義: なぜこの指標が医療の質を示しているのか

紹介割合とは、初診患者のうち他院からの紹介で当院に受診した患者の割合です。また、逆紹介割合とは、初診・再診患者のうち当院から他院に紹介を出した患者の割合のことです。
2022年度の診療報酬改定にて、外来医療については「まず地域のかかりつけ医機能を持つクリニックや中小病院を受診し、そこから高機能病院の専門外来を紹介してもらう」という流れを強化する「外来医療の機能分化、連携の強化」が重視され、特定機能病院等の初診料および外来診療料における紹介・逆紹介割合に基づく減算規定の見直しが行われました。それに伴い、より実態に即した算出方法への変更、また、名称も「紹介率・逆紹介率」から「紹介割合・逆紹介割合」に変更となりました。
具体的には、特定機能病院の場合は、「紹介割合50%未満 又は 逆紹介割合30‰未満」が減算規定の基準となっています。

Plan(計画)

  • 【過去】地域医療支援病院の(旧)要件「紹介率40%以上かつ逆紹介率60%以上」を目標設定
  • 2022.04 診療報酬改訂により「紹介割合50%以上、逆紹介割合30‰以上」を目標設定

Do(実行)

  • 2005.11 地域開業医に向けて「登録医制度」を導入
  • 2009.10 再診患者への「逆紹介支援」の業務開始
  • 2010.04 地域施設との検査機器の共同利用(ダイレクト検査)の推進
  • 2010.08 小児科準夜帯における「かかりつけ医・逆紹介の定型化」の業務開始
  • 2011.04 電子カルテの新機能「かかりつけ医登録」を設定
  • 2011.04 診療情報作成の効率化(電子カルテ上の定型文を複数整備)
  • 2011.05 東京都医療連携手帳を用いた「がん患者の逆紹介」の業務開始
  • 2021.04 地域連携の強化を目的に、院内に登録医療機関案内デジタルサイネージを設置

Check(評価)

  • 【日次】医療機関対応の評価確認(ベットコントロールミーティング)
  • 【月次】紹介率・逆紹介率の数値確認
  • 【半期】近隣医師会との地域医療の評価確認(医療連携外部委員会)
  • 【年次】がん診療における地域医療の評価確認(東京都クリティカルパス連携促進委員会)
  • 【年次】他院動向を踏まえての地域医療の評価確認(11病院地域連携分科会)

Act(改善)

  • 2011.03 2010年度「紹介率40%以上かつ逆紹介率60%以上」の数値達成
  • 2010.04 患者への「かかりつけ医案内」として面談業務(「逆紹介支援」)を確立
  • 2011.09 地域医療支援病院の承認
  • 2014.03 2013年度「紹介率50%以上かつ逆紹介率70%以上」の数値達成
  • 2020.12 特定機能病院の承認
  • 2023.04 2022年度「紹介割合50%以上、逆紹介割合30‰以上」の数値達成
  • 今後、さらなる前方連携の強化を課題とする

考察、改善に向けての今後の予定など

死亡率低下に寄与するために受診コーディネートが必要

医療政策のアウトカムとして重要なもののひとつに、死亡率の低下が挙げられます。それには、患者の早期診断・早期治療、つまり生存に結び付ける受診コーディネートが求められます。
例えば、それまで健康であった患者ががんを疑った時、その患者は入院や手術ができる病院への受診を希望するはずです。患者からの電話問い合わせに「お近くの“かかりつけ医”をご受診ください。」「紹介状を持参ください。」と画一的に回答するだけでなく、患者の症状を踏まえた専門クリニックを案内したり、必要であれば紹介状なしでの受診に繋げる、そうした機能も急性期病院に求められているはずです。
急性期の機能分化を促進させ紹介割合・逆紹介割合の数値を上げるためには、紹介状のない患者の受診抑制策はある程度必要ですが、最終的に必要とされるものは、地域の医療体制を踏まえた受診コーディネートであると考えられます。そうした考えから当院は、地域連携とがん相談をワンストップで提供できる部門(相談・支援センター)を設置しています。
疾患別の受診コーディネートがゆくゆくは死亡率低下に寄与するものであり、急性期病院においては集患対策に成り得るものと捉えています。

執筆者

木村 美保
相談・支援センター 医療連携室アシスタントマネジャー
医療の質
評価側面
Struc­ture Pro­cess Out­come
指標改善
パターン
医療従事者へのリマインド コミュニケーションの改善 監査とフィードバック 医療者への教育 患者への教育 患者へのリマインド 患者へのプロモーション 組織・体制の変更 ルールの変更

4 救急車受入台数、救急車・ホットラインの応需率 Number of Ambulance, Acceptance Rate of Ambulance Call

救急車受入台数

当院値の定義・計算方法

救命救急センターで受け入れた患者のうち、救急車で来院した患者数
包含
ホットライン件数

救急車・ホットラインの応需率

当院値の定義・計算方法

分子
救命救急センターで受け入れた患者のうち、救急車で来院した患者数
分母
救急車受入要請件数
分子包含
ホットライン件数

臨床的意義: なぜこの指標が医療の質を示しているのか

当院では、救急医療の機能を測る指標として「救急車・ホットラインの応需率」を採用してきました。この指標は、「救命救急センターで受け入れた救急車来院患者数」÷「当院への救急車受入要請件数」で算出しています。

「救急車・ホットラインの応需率」の向上は、救急科だけの努力で改善できる指標ではありません。救急診療を担当する医療者の人数、診療の効率化、空床状況、入院を受け入れる病棟看護師や各診療科の協力など、さまざまな要素がかかわります。

総務省消防庁 令和5年版 救急救助の現況 Ⅰ 救急編 より引用

近年全国的に救急車搬送件数の上昇が顕著であり、当院周辺の地域事情も同様の傾向を示しています。

応需率が医療の質を示す適切な指標であるためには、そもそもの救急受け入れ要請数が我々の受け入れキャパシティの上限前後であることが前提となります。そのような状況を勘案すると我々の改善へむけた取り組みの指標としては「救命救急センターで受け入れた救急車来院患者数」の実数に注目していただく方が適切かもしれません。

Plan(計画)

  • 病院の基本方針「高度急性期の特定機能病院として、世界水準の安全で総合的な医療サービスを国内外に提供する」に準じ、救急医療を提供できる体制を整備する。

Do(実行)

  • 救急受け入れ要請を断る結果となった患者について、毎日病床会議にて報告

Check(評価)

  • 断らざるを得なかった理由を常にモニター・分析し、病院のシステムとして介入する必要のあるポイントを抽出

Act(改善)

  • モニタリング継続

考察、改善に向けての今後の予定など

当院救命救急センターとしては、救急車の受け入れ要請に対して可能な限り応需すべく取り組んできました。昨年は当救命救急センター開設以来最多の応需実数となりましたが、一方救急車受け入れ要請数はそれを遙かに上回るペースで増加しており、応需率は下がる一方となっています。当院のキャパシティを考えると、残念ながら要請された救急車をすべて受け入れられるわけではありません。そのような中、当院が周辺地域に対して果たすべき役割を考え、まずは少しでも多くの救急応需に務める努力を継続していくことに注力してまいります。

当院および救命救急センターの基本方針として、最大限の救急応需が目標であることは変わりません。しかし慢性的な満床状態の中、当院の受入能力を超えた救急要請が発生する状況下において、地域住民の救急医療ニーズに応えるため、いかに救急応需をしていくかについては引き続き体制の整備含め模索していきます。

執筆者

大谷 典生
救急科部長
医療の質
評価側面
Struc­ture Pro­cess Out­come
指標改善
パターン
医療従事者へのリマインド コミュニケーションの改善 監査とフィードバック 医療者への教育 患者への教育 患者へのリマインド 患者へのプロモーション 組織・体制の変更 ルールの変更
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